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浮気断定社
第9章 依頼人 瑠璃
指定された時間に洋輔は部屋のチャイムを鳴らす。

女はバスローブ姿で出てきた。

「どうぞ」

「失礼します」

女はソファーに洋輔を促した。

反対のソファーに座った女はテーブルに置いてあったワインを掲げる。

「飲む?」

「いえ、結構です」

「そ。」

女は自分のグラスに注ぎ、飲み始めた。

「それで、瑠璃がどうしたの?」

「父親に暴行されていたのでこちらで保護しました」

「そう」

女は感情なくいい放った。

「担当の弁護士が親権を預かりたいと言っていますが」

「弁護士?
 あなた探偵でしょ?」

「そうですね。
 弁護士は父親の対処で手一杯なものですから」

女は眉間にシワを寄せた。

「使えない弁護士ね。
 自分が来ればいいのに何で探偵なんて雇ってるの?」

「ことが公表されては面倒なのでは?
 探偵であればあなたの動きは公表しなくても済む場合があります」

女はフッと笑った。

「なるほど。
 で、何が聞きたいの?」

「ですから瑠璃さんの親権を預かりたいと」

「それは無理ね。瑠璃は私の娘よ」

「でも厄介な存在なのでは?」

洋輔は畳み掛けるようにいった。

「厄介...
 厄介というよりは、呪縛かしらね」

「呪縛?」

「そう。あの子の顔を見るたびに思い出すのよ」

女はワインを眺めながら低く呟いた。
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