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浮気断定社
第9章 依頼人 瑠璃
瑠璃は大きな溜め息をつきながら校門を出てきた。

転校した共学の学校は学期途中でお嬢様学校からやって来た瑠璃に興味津々で次から次へと質問攻めだった。
しかも同世代の男子と交流のなかった瑠璃には
その男子にどう対応していいかわからず
終始愛想笑いを振り撒いていた。

道の反対側に競馬新聞を読む洋ちゃんの姿を見つけた。

「洋ちゃん!」

瑠璃はパッと明るい顔に変わって
洋ちゃんに近づいた。

「おう。終わったか」

競馬新聞を折り畳んで洋ちゃんが顔をあげた。

「どうだった?はじめての共学は」

「う~ん...疲れた...」

「そうか」

洋ちゃんは瑠璃の頭をポンと撫でて歩き出した。

接近禁止命令の申し立てをした瑠璃には外出や学校の送り迎えに誰かしらが着いてきてくれる。

今日のお迎えは洋ちゃんだった。

瑠璃は今日の出来事を洋ちゃんに楽しげに話して聞かせていた。

学校の最寄り駅まで来たときだった。

「瑠璃、探したぞ」

二人の後ろから低い男の声がした。

二人はそっと振り向いた。

「お父 さん...」

瑠璃の顔が恐怖に震え自然に後ずさった。
洋輔は自分の後ろに瑠璃を隠す。

「瑠璃、帰るぞ」

父親は瑠璃の手を取ろうとした。

「接近禁止命令出てますよ」

洋輔が父親の手を払い冷たくいい放つ。

「お前は誰だ?」

父親は洋輔を睨む。

「弁護士の香川といいます」

洋輔はその風貌からは想像もつかない職業を口にした。

父親はあからさまに舌をならした。

「罰金くらいいくらでも払ってやる。
 瑠璃が必要なんだ」

父親はなおも瑠璃に近づこうとした。

「それ以上近づいたら警察呼びます」

父親は小馬鹿にしたような顔で洋輔を見た。

「呼べばいいさ。
 俺はたった一度瑠璃を殴っただけだ。
 それで接近禁止なら世の中の父親はみんな接近禁止になっちまうな」

そして瑠璃の腕をとった。




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