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浮気断定社
第9章 依頼人 瑠璃
「サイテー」

今度は唇を尖らせた。

「まあ、せっかくだから最後まで付き合えよ。
 居心地悪いのは最初だけ。
 慣れればなんてことないさ。
 社会勉強だと思って気楽にしろよ
 個室だから周りの目も気にする必要ないしな」

洋ちゃんは笑った。

「うん。ありがとう」

洋ちゃんが注文したよくわからないウンチクのワイン。
洋ちゃんはソムリエに向かって頷いている。
瑠璃の前にはジュースが置かれソムリエとウェイターが下がっていく。

静かになった室内で洋ちゃんがグラスを掲げた。

「瑠璃の誕生日に」

「へ?!」

驚いて変な声が出てしまう。

洋ちゃんは優しく笑って

「瑠璃の誕生日に」

ともう一度言った。

「誕生日?」

「そう、今日は瑠璃の誕生日だろ?」

言われてみればそうだった。
でも、いままで誕生日を祝われたことはない。
誕生日ケーキの存在すら知らなかった。
瑠璃にとって誕生日とは書類上必要な数字でしかなかった。

「洋ちゃん...」

「17才おめでとう。
 瑠璃に出会えて感謝している。
 生まれてきてくれてありがとう」

洋ちゃんはずっと優しい笑顔のまま微笑んでいる。

「洋ちゃん...
 私、生まれてきて良かったの?
 生きてて良かったの?」

瑠璃は小さく呟いた。

「当たり前だろ。
 瑠璃のお陰で俺はまた人生を取り戻した。
 瑠璃に感謝してるよ」

「洋ちゃん...」

「ほら、瑠璃乾杯しよう。
 新しい瑠璃の人生の始まりに。
 今までのくだらねー過去なんか忘れちまえ
 瑠璃は今日から生まれ変わればいいさ」

「洋ちゃん...」

瑠璃もグラスを持ち
洋輔に向かって精一杯微笑んだ。

「瑠璃の新しい未来に」

そう言って洋輔は瑠璃のグラスを鳴らした。



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