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第9章 依頼人　瑠璃

瑠璃は目の前に差し出されたお茶を一口飲んだ。

「そんな日々のなかで母は妊娠してしまいました。
　当時アイドルの妊娠はご法度。
　強制的に中絶をさせられるそうですが
　厄介払いをしたかった事務所は母をマネージャーである父に押し付け『売れなかったのはお前の力不足だ』と言って二人を会社から追い出したそうです。

　実は父も当時事務所の売れっ子アイドルに手を出していて事務所としては父を追い出す口実を探していたようです。

　追い出された父は母と二人小さなプロダクションを立ち上げました。
　妊娠しているとはいえ母はあまりお腹の目立たないタイプで妊娠中も芸能活動を続けました。
　といっても華やかなアイドルではなく当時出始めのＶシネマだったそうです。
　妊娠した母は急に色気が出てイヤらしくなり
　それこそプロデューサーや監督から引っ張りだこになったとか。出演作品も急激に増えたといいます。
　
　母は私を出産して二ヶ月後には現場復帰し
　Ｖシネマから昼ドラ、深夜ドラマと活動を移していきました。

　今では大河にも出演する大物女優と呼ばれています」