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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第5章 彷徨(さまよ)う二つの心
 サヨンは髪を洗う手を止め、小首を傾げた。どうも、おかしい。嫌な予感がする。誰かに見られているような気がしてならないのだ。
 それも悪意の籠もった視線だ。が、周囲を見回してみても、別に人の気配はむろん、姿も見当たらない。
 気のせいだろうと考え直して、しばらくの刻が経った。洗い終えたばかりの長い髪を丁寧に乾いた手ぬぐいで拭き、水気を十分に取る。更に梳っていた時、いきなり前方の岩から三人の男たちがすべり降りてきて、サヨンの前に立ちはだかった。
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