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とあるオクサマのニチジョウ
第8章 ドキドキオクサマ
 
「…えっ!?」

 不意に聞こえたマスターの声。

「…いや……もう閉店って………」

 慌てて顔を上げた恭子に、苦笑するマスター。

 狭い喫茶店を見れば、その言葉通りに客の姿は皆無。

「あ、あのぉ………」

 記憶が正しければ、カウンターに常連の客が居た筈だった。

「あぁ。さっき帰って、レジ打ちは俺が………」

「あ…す、すいませぇん……」

 恭子の言葉を先読みしたマスターの言葉に、恭子は謝るしかなかった。

「今日はこの前にも増して、ボーッとしてたけど………」

 カウンターの上を拭きながら吐き出された言葉に、恭子は顔を赤らめる。

「す、すいませぇん」

 露出の余韻に引き摺られていたとは言えない。

 今夜もノーブラ・ノーパンで居る為に集中出来ないとも言えない。

 結局、謝るしかなかった恭子。

 顔を俯き気味に伏せた儘で頭を下げると、閉店作業に取り掛かった。


…やっぱり…マスターの顔……見れないぃ………


 前夜の事を考えると、マスターの顔を直視出来ないでいた。

 バイトに来て数時間。

 一度も目を合わせる事も無く、ドキドキと鼓動を早めた儘の恭子は店の奥へと脚を進めた。
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