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とあるオクサマのニチジョウ
第11章 Scene.01
 
「………で?」

 ジトッとした視線を向ける恭子。

「なぁにがぁ?」

 そんな恭子の視線を気にした素振りも見せない杏子。

「……これ……どういう事ぉ?」

「んん? どういう事って?」

「…気分転換だって言うのは分かるけどぉ………」

「気分転換………出来るでしょ?」

「出来なくはないけど………」

 釈然としない恭子と笑みを浮かべた儘の杏子は、二人並んで座っていた。

「準備は着替えだけで良いって……こういう事ねぇ………」

「こういうトコあんまり来ないでしょ」

 並んで座る二人は、量販されている浴衣姿。

 ほかほかした体に、恭子は苺ミルク、杏子はコーヒー牛乳の瓶をそれぞれ持っていた。

「まぁ、スーパー銭湯なんて……滅多に来ないわよねぇ」

「駅から近いと、いつでも来れると思っちゃうもんね」

 ベッドタウンとは言え、元々は田舎であった地域。

 以前から駅近くにあった銭湯がスーパー銭湯へと様変わりし、二人は歩いて来ていた。

「…てかぁ……浴衣……借りる必要…あった?」

 恭子は体を見下ろして苦笑を浮かべる。

 薄く白いだけの、可愛らしさが微塵も感じられない浴衣。

 杏子は顎に人差し指を当てて、上目に考え込んでは口を開いた。

「んー…。気分的なモンよぉ?」

 にぱっと笑顔を見せた。

 何も考えてなかった事に恭子は苦笑を浮かべるが、次第に顔を綻ばせたのだった。
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