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とあるオクサマのニチジョウ
第11章 Scene.01
 
「それにぃ…気のせいよぉ………」

 更にポテトを咥える恭子。

「いやいやぁ。足音したら、恭子姉のトコ、玄関開いたりしてるから」

 グビッとウーロン茶で喉を湿らせる杏子。

「そ、それは、きっと私じゃなくてぇ………」

 再び恭子の口に投入されるポテト。

「でも、正行さん、暫く泊まり込みだって………」

「ぶっ!?」

 杏子が正行の予定を知っていた事に、思わず咥えていた三本のポテトが発射した恭子。

「きゃぁっ!?」

 自らに向かって飛んできたポテトに、思わず悲鳴をあげる杏子。

「ちょ、ちょっと。恭子姉っ!?」

「ご、ゴメンごめぇん………」

 軽く睨みを利かせる杏子の視線を感じながら、恭子はいそいそとポテトを回収するのだった。

「何か…動揺し過ぎじゃない?」

「そ、そ、そんな事…ないわよぉ」

 何度と言葉を詰まらせては怪しさが増すだけだった。

「ふぅん………」

 探るような杏子の視線を素知らぬ振りをする恭子は、グイグイとジョッキを傾ける。

「………ま、いっか。今は余計な詮索は無しだねぇ」

 口を割らないと判断した杏子の言葉。

 『今は』という言葉に不安を覚えるが、恭子は内心で安堵の溜め息を洩らした。
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