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とあるオクサマのニチジョウ
第11章 Scene.01
 
 突然トイレに響いた声に、恭子の肩が跳ね上がる。

「マジで言ってんのぉ?」

「あったり前じゃぁん」

 高校生と思われる二人組の若い女の声に、恭子は個室を出るタイミングを失った。

「まだ付き合って一週間じゃぁん」

「でも、アイツったらさぁ」

 周りの事など気にも留めていない様子の二人組。

「またお惚気…始めちゃうのぉ?」

「今回はノロケなんかじゃないってぇっ」

 恋ばなに華を咲かせる二人組だったが、個室の中に居る恭子は気が気で無かった。


…いつまでも入ってられないしぃ………
…だからと言っていきなり出ていくのもぉ………


 二人組がトイレに来てから数分。

 水音も無しに、いきなり極端に薄着の姿の女が個室から出て行けば、二人組がどう反応するか分からない。

 逆に、ずっと入っていれば、それはそれで怪しまれる。

 心許なくとも、マイクロミニを履いて出ていくという選択肢を緊張から考えつかないでいる恭子。

 個室の扉の傍で佇む選択を取っていた。

 恭子が思考を繰り返していた間も続いていた二人組の会話。

「そういえばさぁ、聞いたぁ?」

「何がぁ?」

「線路沿いの公園の話ぃ」

 恭子の心臓がドキッと強く跳ねた。
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