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とあるオクサマのニチジョウ
第14章 Scene.04
 
 真希が姿を消したのは、一際大きい二階建ての建物だった。

 よほど裕福な家庭だと思っていた恭子は門の前で佇む。

 視線が表札から離れない。

 木製の比較的大きい表札には『かがやきハウス』と書かれていた。


…真希ちゃん………
…だから…家知られたくなくて……あんなに渋って………


 民間の児童養護施設があるとは小耳に挟んだ事があった。

 しかし、真希がそこに住んでいるとは想像出来なかった。

 真希の明るい笑顔の裏に隠されていた現実。

 一体、真希の過去に何があったのかは分からない。

 恭子の脚が門を潜って敷地へと踏み出すのを躊躇っている。


…私……一体どんな顔をして…真希ちゃんと………


 イヤらしく淫らな面を見せてしまっただけに、真希との接し方に混乱する。

「恭子さぁんっ。早く早くぅっ」

 脚が動こうとしない恭子に、屈託の無い笑顔を見せる真希の声が掛かる。

「え、ええっ………」

 真希の声に背中を押され、漸く脚を敷地へと踏み入れる事が出来た恭子。

「にへへぇ。恭子さん、ようこそぉっ」

 玄関扉を思い切り開けて満面の笑みを浮かべる真希に、恭子は強張った笑顔を向けるのだった。
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