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とあるオクサマのニチジョウ
第3章 働くオクサマ
 
…だ、大丈夫だったよねぇ…
…私…いつも通りだったよねぇ………


 ゆっくり歩きながら、背中に感じるマスターの視線に鼓動が早まる。

 漸くスプーンを取ったと思えば、脚は肩幅程度に開いて尻が見えている状態だった。

 恐る恐る顔をカウンターに向けてみると、グラスを拭く手が止まっているマスターの姿。

 その視線は確実に尻へと向けられていた。

 しかし、マスターは微動だにしない。

 ゆっくりと体勢を直し、カウンターに近寄っても反応を見せない。

「ま、マスターぁ?」

 声を掛けても反応が無い事に、恭子は二三度言葉を吐き出す。

「あ、えっ? えっと……」

 漸く意識を戻したと思えば、何処かぎこちない反応。


…これ……見られ…ちゃった…?


 いつものクールなマスターとは思えない。

 違和感のあるマスターの態度に、恭子の体はカアッと熱さを増した。

「な、何でもないから。後少し、片付け頼みますね」

 言葉を詰まらせるマスターに、見られた事を確信した恭子。

「わ、分かりましたぁ」

 平然を装おうとするも、言葉が詰まる。

 それでも、いつものように片付けをするべくフロアを歩くが、胸の鼓動と体の熱さは増す一方だった。
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