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とあるオクサマのニチジョウ
第1章 こんなオクサマ
 
「どうかしましたかぁ?」

 立ち止まった儘で言葉を発さなくなった男に、恭子は怪訝な表情を浮かべる。

「あ、いや、その……行ってきますね」

 そんな恭子の問い掛けに男は答えず、僅かに表情を強張らせて足早に立ち去っていった。

「…あらあらぁ?」

 男の態度が豹変した理由が分からず、顎に人差し指を当てて小首を傾げる。

 せかせかと歩く男の小さくなっていく後ろ姿を見送る。

「まぁ、いっかぁ………」

 しかし、然程気にも留めずに、恭子は空になった籠を持ち上げて部屋の方へと体を反転させた。

「今日は寒くなくて、洗濯いっぱい出来て助かるぅ」

 ニコニコと笑みを浮かべて部屋へと向かう恭子。

 その後ろ姿に、衣類の類いは見当たらなかった。

 背骨が浮かぶ背中やキュッと括れたウエストに、プルンと張りのある丸い尻を太陽の光が照らしていた。


―――――――――


…絶対…見間違いだよな……


 顔を熱くさせながら、自らが見た光景を否定する男。

 恭子の太腿までを隠していたエプロンの裾から覗いた光景。

 チラリと見えた黒い翳りが頭にこびりついて離れない。


…薄着だとは思ったけど……
…あんな…ベランダで……
…裸エプロンな訳……ないよな………


「俺……溜まってんだな………」

 見た光景を否定し、邪念を追い払おうと頭を振りながら歩く男だった。


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