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とあるオクサマのニチジョウ
第5章 葛藤するオクサマ
 
 再び消沈する恭子。

 引き戸に伸ばした腕を戻そうとした時だった。

「んあぁっ! イくっ! イっちゃうぅぅぅっ!!」

 隣室からの杏子の絶頂を迎えた嬌声が、恭子の頭からマスターの顔を掻き消した。

「ナカっ…ナカに…ドクドクぅっ!」

 子宮に精液を浴びた杏子の悲鳴に近い喘ぎ声は、恭子の感情を蘇らせた。


…まだ…ナカに射精【ダ】された訳じゃないしぃ……
…あれは事故……事故だったのぉっ………
…だから……正行さんで上書きすればぁ………


 今までに浮気の『う』の字もした事が無かった恭子に、自分勝手な考えが浮かぶ。

 マスターと肌を合わせた事に葛藤するあまり、情緒が不安定になっていた事も背中を押した。

 マスターが吐いた淫乱という言葉が当て嵌まりそうな、尻軽女の発想を思い付いた恭子。

「正行さん……今から……」

 正行に可愛がられる姿を思い浮かべる。

 お預けを食らった時間を取り戻そうとすれば、いつの間にか治まっていた体の火照りが再燃する。

 恭子は引き戸に伸ばした腕を引くと、躊躇う事もなくTシャツとミニスカートを脱ぎ捨てたのだった。
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