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とあるオクサマのニチジョウ
第5章 葛藤するオクサマ
 
「…はぁ…」

 恭子はギシッとベッドを軋ませて、ゆっくりと上体を起こす。

 いつ寝たのか分からない。

 薄いカーテンを透かして、明るい朝の陽射しが寝室に差し込む。

 明かりの中に豊満な胸を晒している寝起きの恭子。

 その気分は優れないものだった。


…やっぱり…夢じゃ…ないよねぇ………


 いつも通りの全裸での就寝。

 しかし、股間に違和感を覚えれば、寝室で発情した昨夜の事を思い出す。

 そして、引き摺られるかのように、喫茶店での出来事も蘇ってくる。


…都合いいのは…分かってるけどぉ………


 タオルケットを開けさせて、何も掛けずに寝ているパジャマ姿の夫を見下ろす。

 正行と体を重ねる事で、マスターとの事を無かった事にしたがっていた昨夜。

 それだけの為に疲れた夫を起こそうとしていた、自分勝手な行動。

 自らの馬鹿さ加減に、寝起きに溜め息が溢れるのも仕方が無い事だった。


…でも……帰って来れなかった正行さんだって………


 喫茶店に行く前から悶々とさせられた原因である夫は、隣で無防備に寝ている。

 マスターとの一件は正行にも原因があると、コロコロ思考を切り替える恭子だった。

「もぅ……シャワー浴びてスッキリし………」

 いくら考えた所で、気分は晴れるものじゃなかった。

 気持ちを切り替えようと脚をベッドの縁へと滑らせた時だった。

「………正行…さん………」
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