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くちなし
第3章 闇
「お兄様も…辛いの…?」
ソッと兄の頬に触れる。
驚いたように目を見開くが、スッと目を細める。
頬に触れた私の手に兄の手が重なる。

「ああ。辛い…怖いかな。」
「お兄様も、私に出来ることがあったら言って下さい。」
「優しいね。雅は…。」
「お兄様の方が優しいわ…。」

ーぎゅっ!ー
「優しさなんてないよ。全て偽りだよ。
 雅にだって……。」
「お兄様?………どうしたの?」
「っ…!!何でもないよ?さぁ…そろそろ部屋へ戻ろか?」

2人で温室を後にする。
部屋で一人でいると黒田のことを思ってしまう。

「はぁ……。ため息しか…でないのね…。」
あの夜私は、好きでもない女を抱けると黒田が言った時、確信したはずなのに、少し期待もしていた。
そんな自分が情けない。
私を抱いたことが過ちを犯したことではないと言った黒田。
なら、一体何が?
わからない。そんなことを考えているうちに眠りに落ちていった。

翌朝目が覚めると黒田がいるのではないかと思ってしまう。
早く、黒田のいない生活に慣れなければいけない。
大学へ行く準備を早々とし、屋敷をでて自分で歩いていくことにした。

「あっれー??雅ちゃんじゃなーいー??」
この声にハッとする。
「昴くん…。」
「おはよー!コレから大学でしょ?珍しいね!歩いてるなんてさー!」
「少しは、自分でしないと…!昴くんは、いつも通る道なの?」
昴くんがいつも通る道なら、変えようと思った。
「ううん!違うよぉ…昨日はーちょっとだけ遊んできたからさー!たまたまだよー!……どうして?ふふー!」
「あ…ううん。なんでもないの!そうなんだ。夜更かししたのね。」
スッと私の前に立ちはだかり、道を塞ぐ。

「ねぇ?雅ちゃん?どんな遊びか興味ある??」
自然と身体が強張る。
「ないわ…!」
「本当にぃ…?ふふー!身体の力抜いて?」
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