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くちなし
第3章 闇
「離してくれないかぎり無理よ…!」
「んふふー!雅ちゃんも、僕とお遊びするでしょ??」

昴くんの瞳に吸い込まれていきそうになる。
そんな自分自身が怖い。

「嫌…触らないで…!!」

ーパシンっ!ー

「った…。痛いなぁー。僕の顔…叩いたの?
 ふふっ!ははっ!」
彼はいきなり笑い始めた。
笑っていたかと思うと、急に真面目な顔をして私を見つめる。
「うーん。余計に気に入っちゃったな。
 抵抗する君も悪くない。そんな君が僕に従うようになったら…って考えたら、ゾクゾクしてきたよ!」
この人に何をしても、言っても無駄な気がしてきた。

「はぁ…。」

「ため息を付く君もステキだねー。見とれちゃうよ。」

わけがわからなくなってきた。
そんなことを言ってる昴を越して私は、歩き始めた。

「朝から騒がしい人…。」
遠くから私を呼ぶ声が聞こえる。

「おい。何朝から男とイチャついてんだよ。」
「善っ!!見てたの?!なんで、助けてくれなかったの?」
「は?なんで、俺が。見返りがあるなら別だけどね。」
「え?」
「何を間抜けな顔してんだよ。行くぞー!!」

善のペースにのせられている気がする。
キスしたこと、善は覚えているのだろうか。
何事もなかったように振る舞っている彼は何を考えているのだろうか。

「何?」
ードキっ!ー
「なんでもない…。」
「ふーん。」
よく見れば顔も整っているのに、女の子との話は聞いたことがない。
やはり、問題は性格なのか…。
善は、首の後ろに左手をあてる。
「善の癖なの??その左手。」
「は?ちげーよ。てか、見んな!!」
「ごめんなさーい!」

なんだか、善といると気が軽くなるような感覚になる。


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