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くちなし
第3章 闇
「ん?どうして?」
「あのさ…お前…俺を男って思ってるよな?」
「うん…。だって、私のこといつも助けてくれるし…。」
本当に雅は、罪深い女だ。自分の持つ力をわかっていないんだろう。
こんなに男を惑わし引き寄せる。香りのせいだけではない。
この綺麗な髪の毛も透き通るような白い肌も瞳も華奢な身体も全て。
ここが室内だったら、完全に理性を保てない。

「雅…。少し自分について考えた方がいいぞ。寂しさを紛らわすのは、俺だけにしてろよ?」
頭をクシャクシャと撫でる。
俺はまだ自制心をもてる。他の男だったらこの場で彼女はやられていただろう。
「善…。…うん。ありがとう。」
「さ!帰るぞ。夜はまだ冷える。」
彼女を屋敷まで送り届けると一瞬で気が抜けてしまった。
「はぁー。よくやった…俺。」
ポツリとそんな言葉を漏らし家路につく。

「只今戻りました。」
「雅っ。お帰り。早かったね。あの男の子は?」
兄に質問されドキッとしたが平然を装う。

「送ってくれました。私着替えてきます。」
「そうだったか。今日は二人で食事へ行けないかな?少し、美味しいもの食べないかい。」
「お兄様…。いいのかしら…?」
「もちろん大丈夫だよ。後で部屋へ行くよ。」
きっと兄は、私の気分を紛らわせようとしているのだ。
兄なりの優しさなのだろう。二人で食事に出かけるのは初めてだった。兄と一緒にいた女性講師を思い出す。何を話そう。そんなことばかり考えていた。

ーコンコンー

「雅。そろそろ行こうか。」

ーガチャー

「お待たせしました。ええ!楽しみっ!」
「はしゃいだりして…可愛いなぁ。雅。あ!」
私の髪の毛を触る。
「……/////」
「髪飾りが曲がっていたよ。さぁ。早く行こう。」
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