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くちなし
第4章 迷
昴のお父様が良い印象とは言えなかった。

「…ん?……誰…?」
「昴くん?!目覚めたの?…よかった!」
私が安堵の気持ちになった時
「おい。昴。お前はろくに家にも戻っていないそうだな。
 だらしなく生活しているからだろう。だから自分の体調管理もできん。少しは、兄を見習いなさい。紀村家の恥だ。」

お互い目を合わせようとしない。
昴は悲しそうな目をしている。
お父様はどうして、こんな弱っている時に…。

「お言葉ですが、お父様。
 家に戻らずにいる昴くんにお会いするのは、お久しぶりでしょう。言いたいこともたくさんあると思いますが、今は、身体を労る言葉一つでいいんです!お医者様ですよね?!どうして、そんな言葉一つも出てこないのですか?!」
私は、完全に頭に血が上り声を荒げてしまった。

「……君…。コホン!……昴私は、戻る。
 ゆっくり休みなさい。」

ーガチャン!ー

「………………。」
部屋に沈黙が流れる。
私は、とんでもないことを言ったのではないだろうか。

「……雅ちゃん…。すごーい。クククッ!」
「え?!ごめんなさい!」

「ううんー!ありがとう!うちの親父に反抗する人なんて病院でも、ましてや家族もぉ…そんな人いないんだよ…?
 クククッ!おかしー!さーすがだねぇ!雅ちゃん!」
「謝らなくちゃ!!私行って…。」
「あー。また僕を置いてくのー?大丈夫。あの人も反省するかも…ね?クスクス!」
すっかり元気になった様に笑う昴を見ると安心する事ができた。

「昴くん…少しよくなったかな?」
「ん…雅ちゃーん。ありがとう。雅ちゃんのお陰だよ。ふふふ!!」
もう、日が傾いてきている。
「もう…夕方だね。綺麗…。」
「雅ちゃん…。」
クイッと顎を持たれ、顔を見合わせる。
「す、昴くん?!」
「夕日じゃなくてぇ…僕…でしょ??
 僕が弱ってるところ見たのはぁ…雅ちゃんだけだよ?
 丁度、ベッドもあるしぃ…ムードには欠けるけど…
 ちょっと…イケない雰囲気でドキドキしなぁいー?」
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