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くちなし
第7章 嘘
俺は、彼女に嘘でも嫌いと言って欲しい。
そうでもしないと、また俺は…。

「そばに…居たいよぉ…っ!!」

ーちゅー

「…ん…っ。」

「んん……。」

今私は、キスされてるんだ。
優しいけど、熱い…。

「お嬢様…。」

「やだ…雅って呼んでよ…。」

「それじゃあ…俺も優って呼んで…。雅…。」

「優…。」
二人の熱い視線が絡み合う。
きっと、彼は色々なことと葛藤しているんだろう。

「雅…このキスが最後だ。もう二度と会ってはいけない。
 俺には、婚約者がいる。もう使用人ではなく、多くの社員を抱える社長になった。同じ世界にはいれないんだよ。
 だから…俺は……。」

あなたを一生幸せには出来ない。

「ゆ…う。本当に?婚約者って…。」

あぁ。やっぱり、使用人としていた頃から決まっていたことで、私という好きでもない女を抱いたんだ。
どんな人か、よくわかった。もう、いくら願っても叫んでも交わることは出来ない。平行線をたどっていく関係だと。

「雅…。」

彼女の瞳に光がない。

「優。………幸せになって。私も、幸せになる。そして…一番大切な人をその手で幸せにしてあげて。」

彼女は、俺の腕からすり抜ける。
これでよかったんだ。
まだ、彼女には未来もある。俺ではない誰かの手で幸せにしてもらうことが一番いい。
強く拳を握った。

「あぁ。そうだな。…必ず。」

こんなにも、彼女を傷つけた。
俺なんて一生幸せにならなくなくたっていい。
俺は、まだ彼女を幸せにすることも出来ないのだ。

「……さよなら。」
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