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くちなし
第7章 嘘
泣き疲れて寝てしまった昨日。
今日は、目が腫れている。
頭が重い。

ーコンコン!ガチャ!!ー 

「雅!!」

「?!!」

私の元へ駆け寄ってくるのは、悠だった。

ひかると昴が扉のところに立っている。

「大丈夫かい?!さぁ。これから帰ろう。
 ひかるさん、昴くん。妹が迷惑をかけたね。
 熱があるみたいだ…。今日は、連れて帰るよ。」

こんなに余裕のない兄を見るのは初めてだった。
私は、熱なんかないのは自分がよく知っている。

「ごめんね…みんな。少し…疲れてしまったみたいだ。
 これから、病院へ行って休みながらゆっくり帰るよ。
 きっとこのこも、残念だと思う。ありがとう。」

私を車へ乗せる。

「雅少し待ってておくれ。」

昴と悠が話しているのが見える。
私には何を話しているのかわからない。

「ねぇ。悠さん……あなた…雅ちゃんを…。」

「昴くん。なんだい?少し急いでいるんだが。」

「もしかして…言ったのか?雅ちゃんに…。」

「…それじゃあ、僕はもう行くよ?ありがとう。昴くん。」

ーバタン!ー

「さぁ…。雅帰ろうか。」

どうにでもなってしまいたい。
このまま、どこかへ行ってしまってもいい。

「悠…。ゆっくり帰りたい。」

「クスクス…お父様たちには言ってないんだよ。だから、後から連絡がくるね。きっと。上手く言うから、安心して。
 少しゆっくりしていこうか。あ…。あの別荘へ向かってもいいね。」

楽しそうな会話なのに、表情は悲しそうだった。

「うん…。少し現実に戻りたくない…。」

私は、逃げることを望んだのだ。
この行動が私を堕落させていくと知っていたのに。
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