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くちなし
第2章 香
ーがちゃー

「黒田。支度ができた。」
さっき、黒田に抱きしめられたせいで、胸が高鳴っている。
何事もなかったように、にっこりと微笑む黒田。
「では、参りましょうか。」

車に乗り込み学校へ向かう。
私は、屋敷内で学ぶことも出来るが、学校へ行くこと私の希望で来ている。
エスカレーター式の学校だが、屋敷の中にいるより友人を作ることも出来る。

「お嬢様。お迎えにもあがりますので。何かありましたら、携帯までご連絡ください。」
深くお辞儀をして去って行った。


「みーやびっ!おはよ!」
後ろから声をかけてくる人。
「あ!ひかる!おはよう!」
同じクラスの可愛らしい女の子。私と同じ様な家柄のお嬢様で小学生の時から私と仲良くしてくれている。
私の苦しんでいることも理解してくれる親友みたいな人。

「今日も、綺麗ね!ふふっ♪」
「もー!そうやって、冷やかすんだから!」
「あー!怒らないでよー!」

咲洲ひかると私が揃うと周りの目が凄く気になる。
この学校の花と呼ばれているらしい。
当の本人は、全く気にしていない。
私は、花や香りという言葉には異常に反応してしまう。

私は、あの香りを周りが意識し始めてから、もう8年。
20歳となり、今は大学へ通っている。
特に男性からの視線、私への興味から寄ってくる人は多い。
皆、花の香りに寄ってくる蜜蜂のようだ。

「本当に、怖いわ…。あんな野獣のような目で…。」
身震いがする。

「雅。怖い顔してるけど?」
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