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くちなし
第9章 昴
高校生の時はやさぐれていたり、反抗的だったり、今の昴とら比べものにならないくらい、無愛想だった。
もちろん、危ないこともたくさんした。

「…行ってやってもいいけど…男を家に呼ぶってどんな理由なの?」

「そ、それは…!////」

顔を真っ赤にして、うつむいた。そんな彼女が可愛く思えてしまった。

「別に何にもしない。家行こうか。」

二人は、電車に乗り、明里の最寄り駅で降りた時、声をかけられた。

「あれ?昴。新しい彼女?」

「違う。ただの友達。お前こそ…。」

「私は、新しい彼氏の所に行くの。」

「ふーん。」

昴の耳元まで近づき囁いた。

「あんた、年下のくせにセックスは最高だった。
 今の彼氏じゃ物足りないけど……んじゃね!」

言い逃げしていった女の後ろ姿を見つめていた。

「昴くん?知り合いなの?」

明里の声にハッとする。

「まぁ。元カノかな。」

「そうなんだ!すっごく大人っぽい人だったね!ああいう人がタイプなんだ!」

「んー。別にタイプって訳じゃない。
 年上の女に興味あっただけ。どんだけ、エロいんだろーって考えてたけど、大して変わらなかったなぁ。」

「………。」

急に黙り込む明里。

「おい?どーした?」

「私じゃダメかな…?」

「は…?」

明里は何を言っているんだ。
さっき、父親を好きだって、相談受けたばかりなのに。

「…ごめんなさい。さっきは、昴くんに興味もって欲しくて…。あんなこと言ったの。」

「意味わかんない。帰るわ。」

ーぎゅっ!!ー

「やだやだ!お願い。帰っちゃやだ。少しだけ一緒にいたいの…。」

後ろから抱きしめられる。女を力ずくで振りほどくなんてできなかった。

「…わかった。わかった。行くから、離れろ。」

こんな行動が昴を大きく変えることになるとは思っていなかった。
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