この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
目が覚めたら。
第5章 変態王子が暴走しました。
「……しーちゃん?」
不意にナツに名前を呼ばれ、誤魔化すようにナツを見る。
赤いアロハシャツに、白いハーフパンツ。
首からピンクのレイをかけていながら、体は麻縄にて拘束中。
へんてこりんな恰好の夢の王子様。
甘やかな声音だけは変えず、優しくあたしに問いかけた。
「しーちゃん、雰囲気……違うよね。なんで?」
……まるで優しくない、話題で。
どきっ。
どきどきっ。
「僕ね……、しーちゃんがお腹空いているかと思って、朝イチに社長の自家用ジェットに乗せて貰って、渋滞する銀座から走ってここまできたんだけれど」
……ナツさん。その恰好で走られたんですか?
というか、自家用ジェットって銀座に停まるんですか。
ああ、そんなこと現実逃避だってわかっている。
ナツが言いたいことがよくわかるだけに、その件には触れて貰いたくないのに――。
「なんでそんなに、満腹そうなお顔?」
ナツは可愛く微笑みながら、こてんと首を傾げた。
まるで純粋、天使のような無垢な笑顔。
……だけど細められたその目は、笑っていない。
腹の中は、邪念で一杯のはずで。
「しーちゃん、なんで体からタバコの匂いするのかなぁ?」
……しかもその邪推は、正解だからタチが悪く。
「ん……? 僕、お馬鹿さんだから、わかるように説明してくれる?」
難関私大に現役合格している男は、問答無用の剣呑さを潜めた声音で、あたしを追いつめていく。