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目が覚めたら。
第5章 変態王子が暴走しました。
後から後から、体中から噴き出る、気持ち悪い汗。
「え、ええと……」
それなのに、白衣の担当医は素知らぬ顔で、昨日買ってきた……あの如何わしい4,800円の本を開いている。
どこから出したのかわからない真新しい縄を持ち、図説&写真入りの『見た目も美しい超難易度緊縛調教』などと赤字で書かれた頁を読んでお勉強中。こちらに見向きもしない。
ハル兄、見た目も美しい超難易度緊縛調教なんて今後一切お勉強しなくてもいいから、こっち助けて。
ねぇ、貴方の弟さん、変な空気立ち上らせているんですがっ!!
しかし完全無視。
さすがは鬼畜。
「どうしたの、しーちゃん。すごーく、汗かいてるよ?」
わかっている。
きっとナツはわかっている。
……とはいえ――。
開放的な兄弟とはいえ、言っていいものなのか悪いものなのか。
あの時は必死だったとはいえ、今となってはナツに罪悪感すら芽生えるあたし。
なんでこんなに、浮気現場を押さえられたような切迫した気分になるの?
どうする?
どうするあたし――!!
「しーちゃん、説明出来ないのなら僕の簡単な質問に答えて? さぁ始めるよ? 『しーちゃんに聞いちゃおうコーナー』……はいパチパチ」
突然、やばい匂いがぷんぷんの質問コーナーに突入する。
「しーちゃん、僕の代わりにパチパチっ!!」
剣呑な眼差しに脅され、あたしは引き攣った笑みでパチパチ拍手。
「質問。昨日なされたことは、医療行為ですか、愛の行為ですか?」
「医療行為ですっ!!」
キレらせたら恐いブラックリスト二段目の王子様から、いきなり直球でなされた質問に、あたしは震え上がって即答で返す。
なに、この子のこの目の迫力!!
帝王の血が流れていることをふつふつと感じさせる。
「質問。昨日なされた救命行為をせがんだのは、どちらですか?」
「あたしですっ!!」
ひぃぃぃぃっ!!
ナツさん、可愛い笑顔で質問内容が恐すぎる!!
じりじりと追いつめられていく小動物の気分だ。