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目が覚めたら。
第5章 変態王子が暴走しました。
 
「質問。しーちゃんはその前にお酒を飲みましたか?」

「飲みましたっ!! 男の生き様を三分の一ほど、一気飲みしましたっ!!」


 あたしは警察官のように敬礼。


「質問。しーちゃんは、なんで処女膜を波瑠兄にあげちゃったんですか?」


 具体的な固有名詞を出してくるあたり、ここがナツのわだかまりなんだろう。下のお口をせがむナツではなく、その兄にあげてしまったあたし。

 今更ハル兄とはなにもなかったと言い張って、騙されるようなナツではないだろうし、嘘をつくのも良心がちくちくする。


 医療行為で、あたしはハル兄に助けて貰ったのだ。

 落ち着いた今のあたしなら、そう言えるから。

 ……あの時のあたしは、おかしかったから。


 ナツには事実を言おう。


「不可抗力的に膜をぶち抜いたのは、行方不明になっていた強姦魔。突然飛び込んで来た変態オットセイですっ!!」


 ……ハル兄の口の悪さが移ってしまったらしいが、今更訂正する暇もなく。極度に張り詰めた空気を醸すナツに言うと、ナツは驚いたようにハル兄に振り向いて言った。


「は!? 僕聞いてないよ、波瑠兄以外の存在っ!! 僕が聞いたのは、波瑠兄が酔っ払ってお腹減らしたしーちゃんを、下のお口で満足させたということで!!」


 ナツ、先に聞いてたのかよっ!!

 だからハル兄は、余裕綽々にスルーを決め込んでいたのか。


 というか、ナツに話し済みだとあたしに教えろよ、ハル兄!!

 あたし無関係ではないはずなのに!!


 そして、ナツ様の詰問に震えるあたしを救ってくれよ!!



 鬼畜帝王はどこ吹く風で、お縄に夢中。

 あたしがアンタをお縄にかけたい。



「そうか、それで……。泣き叫ぶしーちゃんを、強面の筋肉マッチョで腋臭ぷんぷんの強姦魔は、脅しつけて組み敷いて無理矢理……」


 はらはら、はらはら。

 ナツは涙をこぼして、あたしのために泣く。


「それで絶望の淵に沈んだしーちゃんは、辛い現実から逃れようとヤケ酒して……結果、目覚めさせてしまった淫魔の血を波瑠兄が鎮めてくれたのか。僕がいなかったから、代わりに……」


 微妙に事実は違うけれど、それでナツは納得したらしい。

 ……言わない方がいい、お笑いのような処女膜再喪失の経緯は。


 妄想王子の妄想を暴走させておこう。


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