この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
目が覚めたら。
第5章 変態王子が暴走しました。
「質問。しーちゃんはその前にお酒を飲みましたか?」
「飲みましたっ!! 男の生き様を三分の一ほど、一気飲みしましたっ!!」
あたしは警察官のように敬礼。
「質問。しーちゃんは、なんで処女膜を波瑠兄にあげちゃったんですか?」
具体的な固有名詞を出してくるあたり、ここがナツのわだかまりなんだろう。下のお口をせがむナツではなく、その兄にあげてしまったあたし。
今更ハル兄とはなにもなかったと言い張って、騙されるようなナツではないだろうし、嘘をつくのも良心がちくちくする。
医療行為で、あたしはハル兄に助けて貰ったのだ。
落ち着いた今のあたしなら、そう言えるから。
……あの時のあたしは、おかしかったから。
ナツには事実を言おう。
「不可抗力的に膜をぶち抜いたのは、行方不明になっていた強姦魔。突然飛び込んで来た変態オットセイですっ!!」
……ハル兄の口の悪さが移ってしまったらしいが、今更訂正する暇もなく。極度に張り詰めた空気を醸すナツに言うと、ナツは驚いたようにハル兄に振り向いて言った。
「は!? 僕聞いてないよ、波瑠兄以外の存在っ!! 僕が聞いたのは、波瑠兄が酔っ払ってお腹減らしたしーちゃんを、下のお口で満足させたということで!!」
ナツ、先に聞いてたのかよっ!!
だからハル兄は、余裕綽々にスルーを決め込んでいたのか。
というか、ナツに話し済みだとあたしに教えろよ、ハル兄!!
あたし無関係ではないはずなのに!!
そして、ナツ様の詰問に震えるあたしを救ってくれよ!!
鬼畜帝王はどこ吹く風で、お縄に夢中。
あたしがアンタをお縄にかけたい。
「そうか、それで……。泣き叫ぶしーちゃんを、強面の筋肉マッチョで腋臭ぷんぷんの強姦魔は、脅しつけて組み敷いて無理矢理……」
はらはら、はらはら。
ナツは涙をこぼして、あたしのために泣く。
「それで絶望の淵に沈んだしーちゃんは、辛い現実から逃れようとヤケ酒して……結果、目覚めさせてしまった淫魔の血を波瑠兄が鎮めてくれたのか。僕がいなかったから、代わりに……」
微妙に事実は違うけれど、それでナツは納得したらしい。
……言わない方がいい、お笑いのような処女膜再喪失の経緯は。
妄想王子の妄想を暴走させておこう。