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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
 
「しーちゃん、僕お腹減った。ちょっとキャンパスから出るけど、おいしいパスタレストランがあるんだ。行こ?」


 あたしはナツのでお腹いっぱいだったけれど、ナツの笑顔を見たら行きたくなった。


「……僕、夢だったんだ。しーちゃんとパスタランチ」


 歩きながらナツはにぎにぎと手を握ってくる。


「ふふふ、こんなに早く叶うとは思ってもなかったんだ、キャンパスデート。こうやって手を繋いでさ……」


 この子は清純なのか清純ではないのか本当によくわからない。

 講堂での一件も彼の望む"キャンパスデート"に含まれるのであれば、この先ナツの恋人が出来たら、相手の子が気の毒だ。


 ……ナツの恋人。


 あたしじゃない誰かを想像すると、胸にちくりとした棘が刺さったのを感じた。まるでヤキモチのようなちりちりとした痛みだ。


 ナツの隣に立つ女の子を、想像したくない自分がいる。



「しーちゃん?」



 ……まさかね?

 母性本能を擽るナツからの執着が当たり前のような環境に居るから、ナツを取られたくないような独占欲が大きくなっているんだ。

 ナツとずっと一緒にいられるような錯覚に陥っている。


 ナツは19歳。あたしは心は17歳とはいえ……アラサーだ。しかもおかしな体質をした厄介な女ときてる。永遠に一緒であるわけはない。


 今はあたしの体が物珍しくとも、いずれナツだって、現実に目を向ける時は来るだろう。


 王子様には、運命のお姫様に巡り会う時がくる。


 あたしはそれまでの場つなぎでしかない。


 ……"その時"が来たら、あたしは巣立っていくナツを笑顔で見送れるだろうか。可愛い女の子との未来を心から祝福してあげられるだろうか。


 決定的な結合はないにしても、昔のような禁欲的(プラトニック)とは言えない濃密な接触をしているのに。ただの幼なじみとは言えなくなっているのに。


 だったら今のナツとの関係はなに?

 餌だと思いたくないのなら、ただの男と女の関係で考えるのなら、一体?
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