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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
心に複雑な思いを抱えながら、あたしを心配してくるナツに曖昧に笑い、おすすめのレストランに向かう。
甘味以外はあたしの味覚は正常だ。
おいしいパスタをナツと食べて、いい気分にひたりながらやりすごそう。
……そう思っていたのに。
女の子が悦びそうな小綺麗な白亜の洋館。
ここまではいい。
だが中に居たのが最悪だった。
「なんであんたがここにいるの、このクソメガネ」
オーダーを取りに来たのは、あたしの天敵。
速攻、気分がそがれた。
「随分とお口が悪いようですね、行き遅れのお客様。呼んでもいないのに勝手に来店早々、不躾にひと様に指を突き付け悪態つく暇に、さっさと注文したらどうですか? お年寄りは、優柔不断で困りますね」
あたしの吐いた毒は、何百倍にもなって即座に返り討ち。
慣れたように返ってくるあたり、こうした攻撃には百戦錬磨なのだろう。
ボキャブラリーが貧困な上、空白の12年の歴史を持つあたしは、大都大学現役合格者に、現実に即したそれ以上の表現を呈示することが出来ない。
く~っ!!
余裕綽々のクソメガネ。嘘くさい儀礼的な笑みを浮かべて、例のように眉間にある眼鏡のフレーム部分を指でクイクイ。
そこには、どうだ参ったかと言わんばかりの勝ち誇った目がある。
売られた喧嘩だと思ったのだろうか。
客の喧嘩を、店員が買ってどうする。
無駄に顔だけいいクソメガネ。
黒いエプロンを腰に巻き、上は詰襟の白いブラウス姿のギャルソン風。
すらりとしているから、こうした恰好もサマになっている。
ここは穏便に処理しようと、とりあえずカルボナーラをぶっきらぼうに頼んで椅子に座ったものの、周りから視線が痛い。
あたしが注目を浴びている理由は、勿論爽やか王子様を連れて現れたことと、表面だけはいい顔をしているクソメガネに悪態ついたからだろう。
クソメガネの反撃はきっと聞いていないに違いない。