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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
しかも人様の目からは、平凡この上ないあたしが、王子様だけではなく、この毒舌店員にも毒牙をかけようと見られていたらしく、"何様かしら"とひそひそ声が聞こえてくる。
そんな奴らには声を大きくして、ハル兄のようにどや顔で言いたい。
静流サマだよ、12年の眠りから覚めたばかりの、男の精液を餌にする……心は女子高生、体はアラサー淫魔だよ!! 文句あっか!!
……間違いなく、病んでいると思われるだろう。
人間、心ない噂にどんなに悔しく思えども、秘密にしておかねばならないこともある。個人の尊厳のために。
「もぅ、サクラ。しーちゃんに絡まないでよ。折角連れてきたのに。あ、僕いつものペスカトーレ」
ナツはこの視線にも平然としながら、ぷっくりと頬を膨らませている。
口の悪いクソメガネには心を許せる王子様、アンタ最強。
「ナツ。お前、連れる女を選べ」
「そんなのしーちゃんしかいないよ。わかってるじゃないか、お前だって」
「お前の目は腐っているな。ああ、賞味期限が切れている女だから、見ていただけで目が腐敗したか。ナツ、今度いい眼科を紹介してやる」
カッチーン。
クソメガネはあたしの睨みをものともせず、さらさらとオーダーを紙に書きながら、ふんと鼻を鳴らして厨房に行ってしまう。
なにあいつ、あいつなによっ!!
「珍しいんだよね。サクラが面と向かって毒吐くの。なんでだろう。めったなことでアイツ、素を出さないのに」
ナツは色々考えているようだが、もしその理由がわかったのならあたしにも教えて欲しい。いや、どうでもいいか。
「しーちゃん、サクラはここでバイトしているんだ。優秀な店員なんだよ。サクラが来てから、ここのお店はお客が沢山で繁盛してるんだ。女性向けの雑誌にも大きく取り上げられたし。凄いよね。僕が来る度、人気が上がっているんだよ」
そりゃあそうでしょうよ。
ナツが足繁く通う先に、無駄に顔だけいいクソメガネも居るのなら、女性人気はウナギ登りでしょうよ。