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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
「珍しい現場見たね」
ナツが神妙な顔をして呟く。
「珍しい? あたしにはいつも通りだけれど。ハル兄、いつも女の人にバッチンバッチンされてたよ?」
「いやそっちではなく……。波瑠兄が連れているのは院長夫人だ。今までしーちゃんを隔離しておきたくて、あの院長夫人のご機嫌とってたはずだったんだけれど……」
予想的中。
誑かしたのは、院長の娘ではなく夫人の方か。
そうか、ハル兄は若さよりも熟女に走ったのか。
「波瑠兄が叩かれているってことは、その必要がなくなったということなんじゃないのかな。多分、波瑠兄……別れを切り出したんだと思う。白衣着てるのもおかしいし。医者として、一線ひいたような。ある種ケジメ」
「ええ!? 浮気ばれたんじゃなくて!?」
一線ひいてケジメなどつけられる、殊勝な男か!?
「しーちゃん。しーちゃんが眠ってからの波瑠兄は、しーちゃんを治療する研究に没頭して昔のような女遊びはしてないんだよ。まあ、男の生理現象のために発散するひとときの"お友達"はいただろうけれど。
というかね、僕ならまだ知らず、しーちゃん用の点滴のためにあんなに抜いてばかりいたら、遊べないというか、遊ぶ気も失せるというか……。だから僕、毎日お歳が体に応えているお兄様の分も頑張ったんだ。ふふふ、だからしーちゃんの体内には6割以上は僕の……」
ワタシキコエテマセン。
「だけど濃厚さにかけては波瑠兄が一番だから、非常用としてあのギュウ」
マッタクキコエテマセンノ、ワタクシ。
"ギュウ"ッテナンデスカ?
ハルニイハ、ヒジョウヨウノギュウニクズキナンデスカ?
女が甲高い声でヒステリックに叫んでいる。
ハル兄は珍しくタバコを吸わず、しかしうんざりとあさっての方向を見ていて女をなだめる気もないらしい。
白衣とタバコはケジメとしても、面倒臭いから早く帰りたいという表情はここからでもありありと見える。
昔からハル兄はそうだ。
面倒事を起こす女は、見向きもしない。
だから女は必死になって泣き叫ぶ……その悪循環。