この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
そんなことを思い出している中、クソメガネが動いた。
話し合いの席に座りたくないとでもいうように、依然立ったままのあさっての方向を見ているハル兄。
一度椅子に座りかけたもののすぐに立ち上がり、ハル兄の正面にて引き攣ったおかしな声をあげて、昂奮しまくる女。
ふたりの横に立つのは、度胸と顔だけはぴかいちの一介のウェイター。
固唾を呑んで誰もが見守る、修羅場突入のランチタイム。
言葉と常識が通じない鬼畜に、インテリぶった陰険が太刀打ちできるか。
クソメガネがすっと歩み出る。
ハル兄が不機嫌そうに目を細め、上げた片手を一度ひらりと動かした。クソメガネを追い払うように、"しっしっ"。
その横柄な態度に、なにも言わないクソメガネは無言を貫き通し、従順に動きをとめている。
さすがの陰険も、鬼畜オーラに飲み込まれたか。
そんな中ハル兄は、クソメガネを払った手を正面に伸ばし、あたしからは背しか見えない女の胸ぐらを掴んだようで――。
「――っ!?」
ブッチュウとやらかした。
ちぅぅぅぅの変態王子レベルではない。
ぶっちゅぅぅぅぅぅぅぅ、だ。
ああ、麗しのランチタイム。
「ふっ……ぁっ、んんっ……」
聞こえてくるのは、女の悩ましい喘ぎ声。
舌をもフルに使っているらしい帝王の攻撃に、聞き耳立てていた客が全員顔を赤らめ、両足をすりすりとさせている、異様な光景。
ハル兄はまだ、キスしている。
あたしがきゅんとくる、タバコを吸う時のような不機嫌そうな顔で。
……ハル兄が感じている時のような、苦しげな顔で。
あたしの中で、どろどろとした黒いものが渦を巻く。
あたしにはキスをしてくれなかったくせに。
あんな女相手なら、してしまえるんだ?
なんであたしは駄目だったのかな。
複雑な心が蘇る。
「……。しーちゃん、苦しいの?」
ナツのいやに抑えられた声音が聞こえた。
「苦しい?」
「自覚ないの? 凄くつらそう」
そしてナツはその言葉以上の辛そうな顔で、いまだディープだろう……クソメガネの前ですごいキスをしたままのハル兄を見る。