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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
 

「そんなにキスがお気に入りなら、下のお口は必要ないね?」

「……………キスだけでも嬉しくて仕方が無いんだ。それ以上のもので応えてくれるなら、なお嬉しいよね?」


 ……やはり下のお口は必要らしい。

 質問を疑問系で返してあたしの同意を求めるあたり、この子は狡猾だ。


「しーちゃん、本気で僕とのこと考えて。僕はいつまででも待っているよ。12年も待っていたんだ、この先だって大丈夫。……だけど早くしてね」


 待っていられるのか待っていられないのか、微妙なことをナツは言う。

 愛されているのだろうコトはわかる。

 あたしもナツは嫌いではない。


 だがあたしがナツを求めているのか、"あたし"がナツを求めているのか、あたし自身もわからない。

 もし心の奥底でナツの体だけあればいいと思っているのなら、あたしの心をも求める純粋なナツの相手に、あたしは相応しくない。


 あたしはまだ、12年後のあたしの体と心を把握できていない。

 なにが隠されているのか、わかっていない。

 そんなあたしの答えが見つかるのがいつとも決まっていないのに、待たされた方は絶対時間を無駄に過ごすことになる。

 もっとナツに見合う相応しい女性との出会いを心待ちしていた方が、よっぽど人生が有意義なはずだ。あたしとナツは幼なじみ、もしくは体だけの需要供給の立場。そこには心を介在せず、割り切った関係でいた方がいい。

 
 胸をちくちくと痛ませながらも、そう正直に口にしようとした時、ばたりと……なにかが倒れたような音がした。

 それはハル兄がブッチュウをやらかした相手だ。


 何事かと思えば、聞こえてくるクソメガネの声。


「さすがはハルさんです。無駄に救急車呼ばずにすみました。奥に寝かせてきますから」


 心酔しきっているといった声音のクソメガネ。

 なに、一体なにが起きた?
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