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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
「ああ、なるほど。波瑠兄……院長夫人の過呼吸発作を口塞いで防いだわけだ。医療行為みたいだよ。……安心した?」
若干、拗ねたような物言いのナツに、あたしは苦笑する。
「安心もなにも……その話はもうおしまい。なんだかあのクソメガネとハル兄、初めて顔会わすって感じしないんだけれど……」
まあよく考えれば、親友の兄貴であるのなら、顔見知りではあったのかも知れないが、あのクソメガネはなぜに犬猿の仲となりそうなハル兄に従順なんだろう。どうして刃向かおうとしないのだろう。
「ああ、言ってなかったっけ? サクラは……」
コツン、コツン……。
突如鳴り響く靴音。
「去年まで『飛龍』の副総長してたんだよ。何代目かは忘れたけれど」
副総長!?
そこには――。
「24代目。総長職を拒み続け、総長を裏から操って楽しむ食えねぇ奴だ」
唇についた真っ赤な口紅の痕を隠さず、白衣を翻したハル兄がいた。
そして、空いている席から椅子を持ち出し、誘ってもいないのに同じ卓にふんぞり返って座る。
「よぅ、奇遇なところであうな。こんなところでもいちゃいちゃ、お前らも好き者だな」
あたしとナツが居合わせていたことは、既に御存知だったらしい。
多分、キスしていたのも見ていたのだろう。
……自分もしていたくせに、なんだか機嫌が悪そうだ。
あの女とのぶっちゅぅぅは不本意ではなかったとか?
とにかく、なにかとりとめのない話題を……。
「ええと、あのクソメガネ……ハル兄の後輩だったんだ?」
「ああ。力で制することを禁じた俺の意向に忠実に従い、飛龍を始めゾク全般を口先だけで操っていた、ある意味総長より強者」
……クソメガネくんのお口は、ハル兄のお墨付きですか。
そんな人が、大都大学の経済学部に現役合格しちゃうんですか。
ユリ、お前の弟は将来きっと、日本の経済界を操るぞ。
「なんでまた飛龍なんぞに」
「サクラは、初めて家に遊びに来た時、波瑠兄の恰好よさに一目惚れしちゃってさ、波瑠兄が冗談でスカウトしたら本当に飛龍に入ろうとしたんだ。だけど小学生は入れなくて、待って待って高校生デビュー」
「その前にナツが切れて、俺が飛龍しめたがな」
「波瑠兄、それ言わないで」
ぽっとナツは赤くなる。