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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2


 つまりクソメガネは、ハル兄によってイケナイ心を目覚めさせられ、ハル兄の奴隷に成り下がっているということか。


 ぶへっくしょん。


 どこかからか豪快なくしゃみが聞こえてきた。


 両刀使いの可能性が高まったハル兄は、気づけばタバコを吸っている。


 くそっ、火を付けるあの顔……見逃してしまった。


 というか、それより……。


「この店、14時まで禁煙じゃ……」

「13時13分から喫煙タイムだ」


 ……帝王様ルールが発動したらしい。


 そして帝王にタバコを吸わせるとあがる男っぷりに、店内は色めき立って、誰も注意しようとしない。



「シズ」


 ハル兄は、気怠そうに言う。



「俺様のイチモツは女の穴専用だ」


 帝王様のお言葉が店内に響く。

 ……あたしの脳内両刀疑惑を否定したいのなら、こっそり教えて欲しい。


「それとナツ、シズ。特殊病棟の契約を解除した。今日中に引き払う。5時には戻って来いよ」

「それはまた急な話で」


 あたしはじっと、ハル兄の赤い頬を見た。

 するとハル兄は面白くなさそうに、その頬を撫でる。


「あの女……ちょっと面倒なこと嗅ぎ付けたからな、ちょうど潮時だった」

「面倒なことって?」


 ハル兄は、ドーナツを三つ作る。


「たとえば、俺様特濃牛乳の成分とか?」


 あたしは咽せ込んだ。

 しかしそんなものギャグにできるはずだ。

 ハル兄が事前に手を打ったのは、きっと他のこと。きっとあたしに関係する、あたしに言えないこと。……そんな気がした。


「シズが目覚めれば、なにもあそこに拘る必要もねぇ。データ確保して病院のものは消し去るし、プライバシーが漏れることはねぇ。後のことは、後に考える」


 ……つまり、今後のことはなにも考えていないらしい。


「まぁ、しーちゃんが栄養とってればいい話だものね」


 弟は脳天気に笑うが、その目にはなにかを感じ取ったのか、剣呑な光が宿っているように思える。

 東大&大都大現役合格コンビの考えることはあたしにはわからないが、彼らがなにも言わないのなら、なにも聞いてはいけない気がした。


「ふぅ、消毒完了」


 ハル兄は指でタバコの火を消し、手の甲で嫌そうに肉感的な唇を拭う。

 その唇には、女の名残は消えていた。

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