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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
あたしの怪訝な顔ではっと我に返ったようなハル兄は、あたしの秘部から指を引き抜くと、てらてらと濡れたその指をナツに見つかる前に口に含んだ。
ぞくりとするほどの妖艶な面差しで。
「どうしたの、波瑠兄」
「ああ、ちょいと今指切っちまった。大したことはねぇ」
ねぇ、どうしてこんな悪ふざけをするの?
こんな人の目があるところで、ナツもいるのに。
あたしをどうしたいの?
そんなに困る顔を見て楽しみたいの?
どうしてそんなに挑発するの?
あたしと繋いだときのような、そんな艶めいた顔を見せるなんて。
あの時が引き続いているような錯覚をさせないでよ。
「行こう、ナツ」
「あ、うん。じゃあね、波瑠兄。5時には帰るから」
「おう。羽目外しすぎるなよ」
「あははは。うん、大丈夫。まだまだ序の口だし」
物憂げにタバコを吸うハル兄。
だけどそこに切なく揺れる光を目に宿していたのを気づかずして、あたしはナツとともにレストランを出た。
「はぁ……36にもなって大人げねぇよな、俺も」
その後のハル兄がどんなものだったか、あたしにはわからない。
「だから嫌だったんだよ、シズを抱くのは。今までしていた線引きができなくなりそうで。俺のもんだと勘違いしそうで」
辛そうなその声音も、その翳った顔も。
あたしには、なにひとつ……。
「この歳での執着は、情けねぇだけだとわかっていたはずだったのに。実の弟に敵愾心剥き出してどうするよ、俺」
傍若無人に傲岸不遜。
常に世界は自分中心で回るもの。
ゆえに帝王の異名を違和感なくとる彼が、咥えタバコのまま、その頭をテーブルに叩きつけて呻き、牙をもがれたように生彩さをなくしていたことも。
「こっちは昨日からアイツの顔が声が……体の感触が消えなくて、体が火照って眠れてねぇっていうのに。盛りのついた中坊かよってなくらい、やられちまってるというのに」
あたしはなにも知らない――。
「アイツは目覚めたら……すぐにナツとお楽しみか。そんな程度の存在か、アイツにとっての俺は。もう少し、こうもっとさ……。
……クソッ、医療行為だと割り切れてねぇのは、俺だけじゃねぇか。
――だっせぇ……」