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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
会計を終えて店から出た後、クソメガネが追いかけてきて、ナツになにか紙袋をプレゼントした。完全サプライズだったのか、訝しげな顔で紙袋を覗き込んだナツは、真っ赤な顔でぱあああと顔を輝かせた。
「なになに、なにがあったの?」
覗き込もうとしたあたしは、ナツに紙袋を閉じられ鞄にしまわれた。
小さな箱に入っているらしい。
「あとで見せてあげる」
……なんでそんなに色っぽい顔で、誘うように言うんだろうこの子。
なんでクソメガネも、いやらしく笑っているんだろう。
肉食獣2匹に見つめられている気分なんだけれど。
なにか嫌な予感しかしないんだけれど。
とにかくご機嫌のナツくんはあたしとおててをにぎにぎ、口笛吹き吹き、軽快なステップを踏みながら、図書館へと向かう。
「ナツ……。今日はもうやめようよ」
ハル兄の悪戯から完全に気分を回復できないあたしの提言は、ナツの驚いて瞠られたその目から、その表情から、容赦なく表現される"悲哀"の色に、罪悪感のような気まずさをもたらせた。
「しーちゃん……。僕楽しみにして、得意じゃないお肉もいっぱい食べたのに」
草食動物らしい王子様。
唇をわなわなと震わし、今にも零れ落ちてきそうな涙の気配に、あたしは訂正せざるをえない。
「……お手柔らかに」
ナツがハナタレデブだろうと王子様だろうと、ナツの涙にはあたしは滅法弱い。
どんなに怒っていてもあたしの方が折れてしまう。
ある意味、ナツを甘やかしてここまで暴走王子にさせたのはあたしのせいもある。あたしはストーカーナツを疎ましく思いながらも、なんだかんだと自らの意志で受容してきたのだ。
昔のナツは、昭和初期の子供のような容貌の上に泣き虫でトロかったから、とにかく周囲から虐められた。虐められてもそれがわかっていないのか、へらへら笑ってばかりで存在感が薄く、さらに虐められた。
端正で恐いハル兄の正反対の弟ということで、さらなる虐めの要素になっていたらしい。とにかくナツは、見ている方の加虐心を擽る子供だった。