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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
 


 気づくと病院で点滴を受け、隣に包帯だらけのハル兄も寝ていた。


 あたしは熱を出して、肺炎にまで抉らせていたらしい。

 ハル兄は崖から滑り落ちて肋骨に皹が入っていたらしい。


 それをあたしとハル兄は一週間で退院した。

 真実を言うと、ハル兄におしかけるナースの頻繁な訪問にうんざりしたのと、夜などあたしが寝てると、据え膳ナースを食い散らそうとするサバンナの帝王のお戯れに酷く疲れたため、医者も吃驚するほどの驚異の自然治癒力を見せたのだ。

 本来ならば3日後に退院できるはずが、

――シズ。俺様残してひとりさっさとシャバに出る気じゃねぇだろうな?


 脅され仕方が無く、ナースが見ていない隙に肌を擦って熱いところに体温計入れたりと、姑息な手段で仮病を装い、ハル兄の退院まで付き合ったのだった。

 帝王の怪我こそ一週間で治癒出来る代物ではなかったらしいが、彼曰く


――治したんだよ。お前が早く帰りたいとぶーたれるから。


 今思えば、喧嘩慣れした元総長にとっては、皹くらい大したことは無かったのかも知れない。それをハル兄を溺愛して泣き喚く佐伯家の両親が無理に入院させていたらしい。

 泣くのが鬱陶しいと、なぜかあたしの家の両親まで面会謝絶にしてしまった帝王。それでも骨の怪我を治そうと思って治せるあたり、さすがは神秘なる大自然に囲まれたサバンナ育ち。

 ……まぁ、完全治癒ではないのを治ったと言い張り、一ヶ月入院だという担当医を脅しつけて最大譲歩の一週間にて退院させたらしいことは、後で聞いた話。

 ちなみにハル兄は、病室でナースをつまみ食いすることがあっても完全には食わなかった。だけど動けるようになると、いつもは病室でタバコ吸っているくせに、あたしの体にタバコの煙は悪いからと外でタバコ吸ってくると下手な言い訳をしつつ中々戻ってこない。

 そして帰ってくるとふんわりと香水が匂ったり、ハル兄の首に口紅の痕があったり。ナース以外の女も帝王の据え膳になっているのかもしれない。

 あたしがそうした女達の"主張"を冷静に指摘すると、"ヤキモチか?"など嬉しそうに聞いて来るから、この自意識過剰男と内心うんざりしながら、大仰なため息をついて無視した。


――この俺様を無視するとはいい度胸だ!


 ……即座に擽られて、長くは無視できなかったけれど。
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