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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
改修工事真っ最中だという図書館は、今日これからの移動用のものなのか、ところどころ蔵書が積み重なっているものの、びっしりと詰め込まれたした書棚に溢れていた。
学生はちらほらで、閲覧席にも数は少ない。
今の図書館は、コンピューターも完備しており、検索はおろか蔵書していない重要図書などは、日本一の図書館と連動して、画面で見れるようになっているらしい。
素晴らしいコンピュータ社会。本と本のネットワーク。
閲覧用椅子もゆったり出来るリクライニングチェアーまで用意されているのは、大都大学ならではのものなのだろうか。
ナツは法律分野の書棚から、数冊の分厚い古びた本を手にすると、すぐ横の窓際に横一列に拡がる、カウンター席のような場所を選んだ。
リクライニングではない椅子だけれど、座り心地がいい。
窓からはテニスコートが見え、男女仲良くテニスをしている。
少しだけ高校時代を思い出して、懐かしい気がした。
「ごめんね、先にレポート書かせて? 帰りに提出したいと思ってるんだ。内容は書き終わったんだけれど、参考文献の記載が間違っていないかどうか確認しておきたくて」
だが12年後は高校時代ではない。
確実に、あたしの最後の記憶から時間は経っている。
ナツは大学生なのだ。
あたしの知らぬ時間を過ごしてきた彼は、あたしの知らなかった理知的な美貌を魅せてクールな面差しで本に目を遣る。
そこにはあたしがすべてだったナツの世界はなく、あたし以外のものもナツは受容しているのだと思うと、無性に寂しくなってしまった。
わかっている。
自分勝手な独占欲からくる我が儘だと言うことは。
置いてきぼりにされた気分。
あたしの方が12年もナツを置いてきぼりにしたくせに。
それでも、ちょっとくらいいいよね。
意地悪してみても――。
「うん、いいよ。ナツがレポートにかかっている分、90分から差し引こうね」
「――っ!?」
ナツの表情が変わる。
ははは、可愛い可愛い。
「だってあたしひとり放置プレイ食らうんだもの。当然よね」
ちょっとナツを困らせてみたくて小悪魔的に笑い、腕時計をしていないあたしは、最近見つけたばかりのストップウォッチ機能を画面に取り出し、ナツにも見えるように机に置いた。