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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
「ナツ、あたしよりあの女がいいの!?」


 捨て身で止めた。


「こんなにあたしを夢中にさせておいて!!」


 ナツの胸ぐら掴んで、深いキス。


 一瞬びくりと固まるナツの体を両手でしっかりホールド。

 そしてあたしの体をナツに密着させた。



「ナツ……。あたしを選んで?」


 痴女の恥女。

 図書館中、呆然とした学生の視線を浴びている。


 ……穴があったら入りたい。

 いや無理矢理穿(ほじく)り返して、逃げ込む穴を作りたい。


「行こう? ここじゃなく……ふたりだけの、官能世界にゅ」


 ………。


 ああ、あまりに痛々しい公開羞恥プレイ。


 ここまでこっぱずかしいこと言って、最後噛んじゃったよ。

 "にゅ"ってなによ、にゅって!!


 ……もう卒倒していいですか?


 あたし頑張ったよ?

 震える涙声で噛みながら、滅茶苦茶頑張ったよ?


 そして――。



「しーちゃんっ!!」



 凍えていたナツの顔が、ふにゃりと緩んだ。

 その顔は、あたしのよく知る王子様スマイルを発動するナツのもので。

 それはキラキラスマイル通り越して、嬉しくて嬉しくて仕方が無いという綻びきったナツの顔。喜怒哀楽の"喜"を突き抜けたようだ。


 初々しい若き乙女が、絶品のスイーツを食べて"キャーおいちいっ"と声を上げているような様子。


「行こう、行こう?」


 甘やかな声音で、ちゅっちゅ、ちゅっちゅとあたしに顔中歓迎キス。

 さらには膨らんだ股間をあたしの体に押しつけ、卑猥に腰を動かし、可愛さの中にいやらしさも忘れずに織り込んできた。


 ……あたしが撒いた種だ。

 うん、わかってはいるものの。

 これで完全に、暴走寸前だったナツの怒りは、別のことに上書きされたとはわかってはいるものの。


 居たたまれない。

 無性にやりきれない。


 ナツ、嬉しそうでなにより。

 しーちゃん、刺激的なキミにどっぷり疲れちゃったよ……。



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