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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2

 図書館から出るのだと思いきや、彼は図書室のカウンター横の鉄の扉を押しやった。


 扉には、『この先書庫につき関係者以外立ち入り禁止』と書いてある。

 その中を堂々と入るナツ。横目で見ていた司書も止める気配もない。


「書庫には貸し出し不可の古くからこの大学に蔵書されている貴重な書物があるんだ。学生はここ限定での閲覧申請を事前にすれば、関係者として書庫に入ることができるんだ。それに僕は、特別だから顔パスで大丈夫」

「特別?」


「うん。ここの図書館公式認定の読書サークル部員なんだ。部員は他にサクラともうひとり。もうひとりの顔はよく知らない。多分部長のサクラは知っているだろうけれど」


 ……大学生といえば、サークルで活気づくお年頃ではないだろうか。

 毎週のように理由をつけては可愛い女の子と飲み会……のイメージがあったのだが、なにが嬉しくて読書サークルなんぞ。麗しの王子様が、顔が取り柄のクソメガネと、なんで地味なサークルなんぞ。

 読書なんて何処でもできるだろうに、しかも公式認定で三人ですか……。


「サークルに入るとね、借りられる本は無制限だし、書庫の片隅の物置化しているお部屋を自由に使わせて貰えるんだ。冷蔵庫もレンジもあるし、パソコンもプリンターもあるし。テスト前とか、書庫の文献を持ち込んでレポート書けるし、サクラと重宝してる。

なにせこの大学、レポート評価が厳しくてね、膨大な量を調べて書き上げなきゃならないんだ。僕まだ一年生で書くの慣れていないのに」


 ご立腹ナツのほっぺは、可愛くぷっくり。

 その一年生のレポートが学会用に教授が盗用したとかハル兄と言ってたよね? ナツ、あんたは凄いよ。うん、いろいろ。


 ナツと手を繋いだまま書庫を歩く。


 なんだかナツとは、手を繋いで歩くのが普通になってきてしまった。

 12年前に繋いでいたのはハナタレデブ。今は美麗な王子様(頭にお花咲いているけれど)。容貌は全然違うのに、どちらの手もあたしの手を離そうとはしない力強さと、繋いでいる間中嬉しそうにしている表情は同じだ。

 今としてはあたしが繋げて歩いているのか、あたしが繋がれているのかよくわからない。
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