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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
 


 ナツがあたしを抱きかかえたまま、鍵を取り出して開けたのは、和室。入った瞬間、湿ったい草の匂いが鼻を掠めた。

 部屋に片隅には小さな冷蔵庫、その上に電子レンジ。そして長細い文机の上には、パソコンとプリンター機器が乗っている。

 部屋の殆どが奥に拡がっている山積みに見える段ボール箱に独占され、実際座れるスペースは畳2帖分もないだろう。段ボールを片付ければ、天井の大きさからしてきっとこの部屋は6帖くらいの大きさになる。


 ナツは畳のスペースに、あたしを仰向けに寝かせた。

 そしてあたしの顔の両側に両腕をついて、恐いくらいのオトコの眼差しであたしを見下ろす。


「ここならもう……邪魔されない。鍵もかけたから」


 
 ナツから向けられる強烈な熱視線に頭がくらくらする。

 まるで真夏の陽射しのようにぎらぎらして、目を開けてられない。


 ナツは本気だ。

 冗談めいた面影はなにもない。


「ナ、ナツ。なんか喉渇いたね、ちょっと冷たいもの……」

「今からしーちゃんは体の全てが潤うから、大丈夫。……しーちゃん、僕を見て。目をそらさないで」


 そして、あたしに跨がるようにして膝立ちしたナツは、


 「僕だけを見ていて」


 あたしの上で、ゆっくりと上着を脱ぎ始める。

 依然熱が滾るその目はあたしを捕らえたまま、もっと見ろといわんばかりに挑発的な光を斜めから落としてくる。

 彼はなにがあたしを惹き付けるのか、それを本能的に感じ取れるのだろう。あたしを惑わす確信犯的な艶気を放ち、魅縛してきた。


 動けない。

 ナツから目を離せられない。


 ドキドキする心臓が、破裂しそうで。


 捕食者に、魅入られた哀れな獲物の気分――。


 畳に放られるナツの服。

 均整が取れた白皙の体から、仄白い光が揺らいで見えた。


 僅か乱れて揺れた髪を、ナツは片手で掻き上げ蠱惑的に笑う。


 立ち上るオトコの艶香。


 幻惑的な揺らめきに、頭がぼんやりする。


 
 揺れる、揺れる。

 夢幻のように、ナツは。



 揺さぶられる。

 あたしの理性も本能も――。


 揺れて揺らされて、目覚めてしまう。


 メスとオスの……細胞が。

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