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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
ナツはあたしの頬を手で摩る。
「心を縛れ切れていないのに、しーちゃんの体が……別のところと繋がってしまう。僕から離れてしまう。そう思ったら……。僕は……昔のような思いをしたくないんだ。わかる? 小学生っていう立場がどんなに惨めだったか」
その瞳が切なげに潤んでいる。
「あの時のように、なにもできない子供じゃないんだよ、もう僕は。それを証明したい。僕だって……しーちゃんを堂々と愛せるんだ」
だがその光は揺れているのではなく、確りと強く定まっている。
「波瑠兄には負けない」
……覚悟している力強さがそこにはあった。
「ねぇ、もしかしてハル兄とのこと誤解してるの? だからあの時は……」
「わかってるよ、波瑠兄からも聞いた。しーちゃんは栄養切れになって、しかもお酒を飲んでしまったから仕方が無く。……そう聞いたけれど」
ナツは翳りの落ちた顔で寂しげに微笑んだ。
「どうして……口で波瑠兄のを貰おうとしなかったの?」
「え?」
「どうして、波瑠兄には……下で貰いたいとせがんだの?」
……苦しそうだ。
「僕がお願いしてもだめなのに、どんなに体がトロトロしててもしーちゃんの理性は崩れないのに。……そんな強い理性が効かないほどに、どうしてしーちゃんは波瑠兄を求めたの?」
ナツが苦しんでいる。
「どうして波瑠兄なら、自分から求めるの?」
「ナツ……」
「僕がしーちゃんのナカで完全に耐えられるようになったとしても、その時しーちゃんは体だけではなく、心までもが波瑠兄に繋がっているかもしれない。だから僕……」
「消えちゃうよ」
あたしの喉奥から低い声音が出る。
「今のナツは間違いなく消えちゃう。ナツがいなくなったあたしがどう動くのか、ナツはそこまで考えてる?」
「……っ」
「ナツがいなければ、あたしはハル兄に頼らざるをえない。上であれ下であれ、あたしはずっとハル兄と繋がっている。ナツの分も」
ナツがくっと唇を噛んだ。
「あたしはママのように、ナツは追わないよ」
どんなに酷い言葉だろうと、わかって欲しいのだ。
今に流されて万が一のことがあれば、ナツが求める未来はないことに。
自らの存在が消えた世界は、いつまでも、自らが望み続ける純粋で輝く世界とは限らない。