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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
「ナツがあたしに求めるのが、ただひとときの快楽だけだというのなら、あたしはここから先もうなにも言わない。だけどもしあたしとの未来を求めるのなら、今あたしと繋ぐのは体ではなく……あたしの心にして」
あたしは痛ましい翳りを落とすナツの頬に手を添える。
「ナツ。ハル兄が繋げたのは体だけだった。ナツもそうしたいの?」
ハル兄に対抗心を燃やしているのなら、
「ナツも、愛あるキスは必要としないの?」
ナツはハル兄とは違うスタンスに立っているということを自覚させないといけない。
ナツがハル兄と違うこと。
……それはあたしに注ぐのと同じ以上の愛を、あたしに求めていることなのだから。
ハル兄はそれを拒否したんだ。最初から、それを条件にして行為は始まった。たとえハル兄が命をかけてあたしを満足させてくれようと、それは愛から出たものではない。手のかかる子供の駄々をあやしてくれただけ。
担当医としての使命。幼なじみとしての慈悲と同情。
それを愛ゆえだと邪推するナツ。あくまでハル兄の行為をなぞって愛を錯覚したいのなら、医療行為が必要ではない今、それを性急にしなければならない必要性が、愛に関係あるかを考えて欲しい。
やがて――。
「ずるいよね、しーちゃんは」
ぽつり、ぽつりとナツは声を漏らす。
伏せ気味のナツの目は、彼の葛藤を示すように、長い睫毛が小刻みに震撼している。
「こんなに……僕を求めている顔をしているくせに。僕に欲情しているくせに……。口から出るのは、反対のことばかり」
ナツは頬にあるあたしの手を上から掴み、自らの頬を動かして、あたしの掌に頬をすり寄せる。
その甘えるようなねだるような仕草は、切なくなる程愛おしく思えた。
「じゃあ察して。あたしがナツに欲情している分だけ、あたしはナツを大事に思っているということに。あたしも……必死なの」
「……ずるいな……本当にしーちゃん」
頬に触れていたその掌に、ナツの唇が落とされる。
「心を縛ってなんてお願いされたら、僕なにもできなくなるじゃないか。このまま強引にしーちゃんと繋がっても、ただのひとりよがりで空しくなるだけじゃないか」
一心にキスを落とす姿は、健気でいじらしい。