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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
 


「ねぇ、今絶叫が聞こえなかった? やっぱりここ……幽霊が出るっていう噂あるから……」

「そんなわけないでしょ。ここに私が勤めて何年だと思ってるんだ。ほら、誰もいない」




 大きくなる男女の声。

 閉まるドアの音。



 間一髪――。



 段ボールの山の隙間に、ナツに後ろから抱きしめられるような格好で逃げ込んだあたし達は、ナツの機転で見つからずにすんだ。

 さすがはサバンナ帝王の弟。王子も機敏だ。

 自分の下着も服も荷物もすべて持参している。


 あたし達は息を潜めて、突然の侵入者の正体を突き止めようと目を凝らした。



 段ボールの隙間から見えたのは――。



「――っ!?」



 研究室でサインを待っているだろうあのよぼよぼ先生と……。



「!!!??」



 彼に抱きついている、委員長。

 そう、あのゲホンゲホンのお下げの委員長。


 ……はい?


「なんなんだよ、あのオンナ!! あのオンナのせいで、またしーちゃんカライキ!? 僕が……ちょっと吃驚して、しーちゃんのお股から離した隙にっ!!」


 ナツ様、小声でご立腹。


「今度こそ一緒にイこうと楽しみにしてたのにっ! 今度こそ、今度こそって!」


 ごめんなさい、ナツ。



「――あのオンナ、殺す。ぶっ殺すっ!」

「夢の王子様がそんな言葉使っちゃだめっ!! ナツ、またしよう、ね?」


 目をうるうるさせて悲憤するナツの頬にキスをすると、


「……お口がいい」


 ぷっくり頬を膨らませたナツに訂正をねだられ、それを実行すると……


「しーちゃんからのちゅう……ふふ」


 少しだけナツはご機嫌になった。



 考えてみれば、三回……委員長に邪魔されているあたし達。

 どちらがストーカーなのか最早もうわからず、すべてナツの目論見を邪魔しに現れてくる。天敵という奴に近いだろう。



 ああ、それは後ででいい。

 今、目の前の光景はそれ以上のとんでもないことが起きているのだから。



「タカシくん、会いたかったっ!!」

「ああ私もだ。野暮用で待たせてすまないね」


 ……待て待て。

 これは一体どういうことだ?


 なんでこのミチマッチにふたりが抱き合い、濃厚ちゅうを始めたんだ?

 え、それ以上始めるの!?
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