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目が覚めたら。
第6章 変態王子が暴走しました。2
ふと、愛おしげにこちらを見下ろすナツの眼差しと目が合った。
「おいしい……?」
息を荒げながら聞いて来るナツに、あたしは笑顔で頷いた。
「……手放せないや、僕」
「……?」
「早く……なんとかしないと。こんなに可愛いすぎる子が、他にとられないように。帰ったらサクラに……ああ、独り言。ふふふ、しーちゃん。髪食べちゃってる」
頬についていた黒髪をナツが優しく取ってくれた後、ナツはあたしの黒髪を手櫛で梳かしながら、静かな微笑を顔に湛えた。
部屋には既に人影はなく。
あたし達の秘め事が原因なのか、単純に行為が終了したのかどうかはわからない。
甘く気怠い余韻に浸りながら、やがてナツがあたしの唇を求めてきた時……突然、音楽が鳴り響いた。
「もう邪魔はいやだ」
舌をねっとりと絡め合う濃厚なキスをしながらも、依然ムードぶち壊す音楽。ナツが煩いと蹴飛ばした荷物から飛び出たのは、音を流すスマホ。
「ナツ、電話……」
「知らない。というか、しつこい」
発信主は……ハル兄と見えた気がする。それすら確かめていなかったらしいナツが、さらに苛立ったように再び蹴飛ばした拍子に、どこか画面が触れて……通話状態になってしまったようだ。
「ナツ、電話に……」
「いいよ、電話よりしーちゃん優先。ん……しーちゃん、もっとちゅう」
そんな時だ。
『優先するのは俺様だろうが!!
何時だと思ってやがるっ!!
乳繰りあってねぇで、さっさと帰ってこいっ!!』
帝王、大激怒。
ブチギレハル兄の凄まじさは、あたしもナツも知っている。
……見れば、時刻は5時半過ぎ。
約束の時間はとうに過ぎていて。
「やばいっ!!」
あたし達は真っ青になって、慌てて帰る支度をした。