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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
◇◇◇
図書館は、4時に蔵書整理に入るというナツの言葉を、言った本人すら忘れ去っており、書庫の外は既に積み上げられた本の迷路。
出口に行き着くまでそれに惑っていた時間、あたしがショーツをはきかえた時間、ナツが文献未確認のままにレポートを教務課に提出した時間を付け加えると、正門に出られたのは6時ちょっと前。
「やばいね……。波瑠兄は数秒で病院に帰ってくることを望んでいるのに、あれから全速で行動して15分過ぎ。仮にタクシー使ったとして、病院に着くのは間違いなく6時超え」
「ナツ。あたしお腹がピーゴロゴロしていたことにしよう。お昼のカルボナーラが祟ったように」
「そこまでしちゃうと、波瑠兄……レストランに怒鳴り込んで、慰謝料ぶんどるところまでしちゃうよ!?」
「うわわ、それはマズいね。それだったら、帰り道に迷ったおばあさんを案内して遠回りしていたってことに……」
ハル兄にどういいわけしようかとナツと相談していた時、正門の外で膨れあがる学生のざわめきが。
「きゃーなになに格好いいっ!」
「どこかの国の王様!? でも白衣ってなに!?」
「……しーちゃん」
「……ナツ」
いやな予感はしていたんだ。
だからというべきか……居た。
腕組んでご立腹顔の、咥えタバコの帝王様が。
逃げられない。
帝王の電話があってからすぐに門を潜っていないことはお見通しのはず。おそらくハル兄はここから電話をかけたのだろう。
沸き返る歓声。
震え上がる戦慄。
白衣の帝王様の後ろには、超高級外車と思われるピカピカの赤い車。
残念なことに、外車と言えばベンツとフェラーリとポルシェくらいしか思いつかないあたしには、あの若干潰れたようなカクカクとした不思議な車体と、ちょこんとあるロゴマークがそれ以外のなんの車であるのかわからない。
「ランボルギーニ・アヴェンタドール!」
ナツが不可解な呪文を放つ。
「しーちゃん、波瑠兄ランボルギーニできちゃったよ。幸い人だかり。見つからないように腰を低くして……」
こそこそ、こそこそ。
身を屈めて通り過ぎようとすれば。
「そこのコソ泥のような、俺様の弟と下僕! こっちに来いっ!」
やばい。
下僕として見つかってしまった。