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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
血を滾らせたような真っ赤な闘牛車が連れたのは、あたしの家だった。
あたし的には何日かぶりに帰宅した感覚だったが、実際は12年経っている我が家のくせに、記憶している外観そのままだ。
ママが大事にしていた中庭にも綺麗な花や野菜が植えられているらしいことは、どんなに暗い色となった空の元でも、後ろから照らし出す煌煌とした車のランプでよくわかる。
雑草すら生えていない、むしろママが死んだ以降、あたしがひとり住んでいた時の方が荒れていたように思う。
「ウチのお袋とナツが、お前の家をきっちり管理してた。いつお前が戻ってもいいようにって」
カチッというジッポーが開いた、軽快な音が夜空に響く。
あたしが感激に泣きたいのを我慢していると、ナツがあたしの横に立つ。
「ごめんね……お野菜は勿体ないから、毎年おいしく頂いちゃいました」
優しい笑みに、つられてあたしも微笑んだ。
「お野菜も喜んでるよ、きっと。愛情こめて育てて貰えれば。そんなナツにおいしく食べて貰えるのは、嬉しいって喜んでるよ?」
「ふふふ……。それからね、やっぱりそのまま放置は勿体ないから、しーちゃんがよく使っていた下着も頂いちゃいました」
同じ流れで爽やかに言うナツ。
「その中のモノも、僕が責任もって愛情込めて丹念に育ててるから……」
あたしは微笑みながら、
「きっと喜んでるよ? そんなナツにおいしく食べて貰えるのは、嬉しいって……。
――なんて言うか、この変態下着泥棒っ!」
ざざっと一歩左足を前に踏みだし、ナツの鳩尾に右の"ぐー"。
蹲(うずくま)るナツを見て、やる気のない拍手が送られてきた。
「12年ぐーたら生活送ってたわりには、中々いい動きだな。お前17歳のフリしてレディース入るか? ツテあるぞ」
「結構ですっ!」
「波瑠兄、僕の心配してぇ……」
「おう、お前のたるんだ腹を心配してやる」
「そんな僕メタボじゃないよ……」
「ナツ、俺様のどこがメタボだって!?」
「言ってない、言ってないっ! ぐりんぐりん、いやぁぁぁぁ」
静寂な夜、仲のよい鬼畜帝王と変態王子のお戯れ。
帝王は、ちょっぴり多感なお年頃らしい。
……鬼畜のくせによ。