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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
そんな時、腕時計を見たナツがハル兄に合図して、ふたり連れだって部屋から出て行ってしまう。
人魂を浮かせて沈み込むおじさんを宥めたおばさんが戻って来て、あたしの横に座って微笑んだ。笑うと顔のパーツがなくなってしまうのが残念。
「ナツとハル兄どうしたんですかね?」
「ああ、準備よ準備。12年頑張って練習してきたからね。奈都発案」
「……?」
「ふふふ、奈都ね、見た目は変わっても、静流ちゃんに一途なのは変わっていないわ。静流ちゃん覚えてる? 昔嵐の日、家に忘れた奈都のために温泉宿から静流ちゃん飛び出したでしょう。あの後からよ、静流ちゃん想い続けてるのは。肺炎になるほど可愛がってくれた記憶が、あまりにも鮮やかだったのね」
可愛がったというより、ナツを引きずり込んで、コサックダンスを踊り狂って体力を使い切ったのが、肺炎に結びついたと思っているんですが……。
そういう意味では、コサックダンスを強いられたナツにとって、あたしの存在は異質すぎて鮮烈な記憶だろう。
それが恋に発展したのがすごいと思う。
「静流ちゃんにとっては迷惑だったかもしれないけど、静流ちゃんに恋人ができる度に、あの子なりに悩んでいて。静流ちゃんに言われた"奈都が年上になったら、奈都をお嫁さんにしてもいい"というのを、あの子ずっと忘れられず」
言った本人は忘れていました。
「来たるべき時のためにと懸命にあの子……料理覚えてね、既にかなりの腕前よ。掃除洗濯あの子……花嫁修業はばっちり仕込んだから、静流ちゃんいつでもお嫁に貰ってあげてね」
……おばさま、お嫁に出していいんですか?
息子に花嫁修業をさせてて、本当にいいんですか?
いやそれより、ナツがあたしより年上になることはないって教えてあげましょうよ。
「それとも、静流ちゃんは波瑠の方?」
「え?」
突然おかしな方に話を振られたあたしは、裏返った声を出してしまった。