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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
「うふふ。だって静流ちゃん、昔は波瑠のお嫁さんになりたいって騒いでいたからねぇ。波瑠だって満更では無かったと思うわよ。いまだ独身だし」
「あ、あたしがハル兄のお嫁さんになりたいって、あたしが言ってたんですか!? 脅されたとかじゃなく!?」
「静流ちゃんからだったわよ。物心ついた時から、ホントに波瑠追いかけ回していたわ。忘れちゃった? 静流ちゃんを追いかける奈都みたいだったわね」
忘れたというより初耳で。
あたしが、ハル兄のお嫁さんを願っていた?
――で、ストーカーのように追い回してた?
「まぁ幼稚園の時の話だけど」
そうだろう。
小学生の時には、女にだらしないハル兄に失望していたのだから。
それに恋愛感情云々以前に、ハル兄は結婚向きじゃない。
そう思いつつも、おばさんの言葉が耳に残る。
――波瑠だって満更では無かったと思うわよ。
……だけどそれは昔のことだし。
妹として、ハル兄は虐めて……いや、可愛がってくれたんだし。
妹として……。
どこか心に刺さる棘。
キスをしてくれなかったことが尾を引いている。
重苦しい黒いもやもやが、心を占めた時だった。
ビリビリビリ。
なにかのホイッスルのような音が鳴り響いたのは。
「あ、始まったわ……って、パパじゃないっ!」
音に反応して、おじさんが歌い出したのは愛の賛歌。
万年ヒラのいち公務員が歌う旋律は、あたしが知っている曲とは随分とかけ離れていて、最早なんの曲かわからない。
そんなおじさんをおばさんは部屋からつまみ出し、代わって部屋に入ってきたのは、白いタキシード姿のナツ。
しかもミルクティー色のふわふわの頭に、軽くワックスなんていうものをつけて、おしゃれしている。
「!?」
うわ、なんだこの変化球攻撃。
不意打ち食らって、心臓がどっきんどっきん。
イケメンがお洒落したら、こんなにときめくものなの!?
あたしこんなにミーハーだったの!?