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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
くらくらする。
ハル兄から目を離すことが出来ない。
ハル兄の熱を近くで感じたくてたまらなくなる。
……演技の域を超え、ハル兄を渇望してしまう。
「……お前、俺に……抱かれただろう? 俺に、抱きたいと強く思わせただろう? 俺を動かすほどの情熱で……今度は心を堕としにかかれよ」
漆黒の瞳がなにかを語っている。
叫び出しそうなほどの激情を湛えているのに、彼はそれを口にしない。
「シズ……」
もどかしい熱をあたしに伝染させながら、ハル兄は訴える。
熱い。
ハル兄の熱で、体が熱い。
熱で視界が潤んで見える。
熱でハル兄が苦しげに歪んで見える。
「その顔で、俺の心が欲しいと……懇願しろ!」
衝動的だった。
あたしは伸ばした両手をハル兄の首に巻き付け、ハル兄の首筋に顔を埋めて言った。震えた……掠れきった声で。
「ハル兄……好き」
どくん。
ハル兄の体が揺れた。
「シズ……こっち見ろ」
また唇が触れあいそうなその距離で、ぎらぎらと光るその瞳はやはりどこか憂いを帯びて悲しげで。
「俺の顔を見て、もう一度言え」
どくん。
今度はあたしの体が揺れた。
「静流」
呼応したように、あたしの口から言葉が出る。
「好きだよ……ハル兄」
なぜだか、涙が出た。
涙で滲む視界の中で、ゆらゆらと揺れるハル兄が……陽炎のように幻になって消えてしまうように思えてしまい、恐くなった。
「どこにも行かないで……。ずっとあたしの傍に居て」
ああ、きっとこれは演技だから。
だからあたしはおかしなことを口走っている。
これは、ハル兄の指導によって導かれた即興の言葉。
「……あたしだけを愛して。
あたしだけを……ハル兄の本気のオンナにして」
そう思うのに、心が震えて苦しくて。
まるで、本当に恋心を訴えているようだ。