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目が覚めたら。
第7章 鬼畜帝王が暴走しました。
 


「……ハル兄、あたし……」

「……今夜、"兄貴"として接して欲しいか?」


「波瑠」


 "恋人"を選んだあたしに、嬉しそうにハル兄は笑った。


 だから悔しくなったんだ。

 ドキドキさせられるのはあたしばかりで、ハル兄は弱り切っても、結局はこの状況を楽しめるほどの余裕があるわけで。


「恋人っていうのは、一方的なものでは成り立たないよ? 波瑠からの返事聞いてないよ?」


 たとえ演技だろうとなんだろうと、ハル兄から迸るこの熱に名前をつけたくて。名目が欲しいんだ。ただ流されたくないんだ。


 だから――。


「波瑠は……? あたしが好き? それとも据え膳へのお情け?」


 少し困らせてみたかった。

 帝王優位のこの甘くなりつつある状況を、少し変えてみたかった。

 
 言及したらハル兄は、どう答えるのか。

 

 するとハル兄は眉間に皺を寄せて、煩悶する顔つきになった。


 ははは。

 やっぱり言いたくないよね、"そういう好きの感情はない"って。

 ED治療に、あたしの演技に乗っているだけだもの。いつもと趣向を変えて、もう少し、頑張ってみたいんでしょう?


 いいよ、わかっている。

 あたしは治療道具。

 キスはご褒美。それ以外の甘い言葉は、気分を盛り上げるための演技。


 ハル兄がここまで演技がうまいとは思わなかったけれど。思わず本気かと、ドキドキしちゃったけど。


 わかってるんだ。長い付き合いだもの。


 サバンナの帝王は、誰のものにもならない。

 誰にも従属しない。ましてやあたしになど。


 恋人や今夜を強調したのが、ハル兄の本音。

 一過性のものだと割り切り、この……茶番にしては酷くリアルさを求められた恋人ごっこを、長くは続ける気がないこと、あたしにはわかっているから――。

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